純文学の最近のブログ記事

太宰の文体は読者に語りかけるようなので、自分が太宰とは似ても似つかぬ人間であっても他人事とは思えなくなってしまう。登場人物の行き場のない苦しさ居場所のない孤独感に自分まで苦しくなってしまうので、『津軽』の「獲友の告白」を読んでいて心から「よかった、よかった」と思ってしまった。

太宰は津軽旅行での昔の友人、女中、下男との再会を『津軽』に著す。津軽の人は人をもてなしたい気持ちが強すぎてそれが空回りすることがあるらしい。右往左往してあれこれ持ち出し、どうしていいかわからなくなり結局お客を閉口させてしまう。散々ご馳走した挙句、後日非礼をわびて回らねばならなくなることも珍しくないそう。太宰はこれを「津軽の人の愛情表現は、少し水で薄めて服用しなければ他国の人には無理なところがあるかもしれない」と表現する。きっと、太宰にもこんな面があったのだろう。

太宰はどうしても会いたかった昔の女中、たけとの再会を果たすが、矢継ぎ早に質問を浴びせかけるたけの不器用な愛情表現に自分との共通点を見出す。「見よ、私の忘れ得ぬ人は…」と津軽で再会した人々を挙げ、「私はこれらの人と友である」と宣言する。「見よ」というのが特にいい。「獲友の告白」と言われるこの部分を読んで、私まで嬉しくなってしまった。

太宰自身、旧家に生まれていながら父や兄には近づきがたさを感じ、下男や女中とは打ち解けるけれどやはり自分は旧家の人間だという意識があり、自分の居場所を上手く定めることができずに悩んだのだろう。その孤独には一生付き合わねばならないが、それでも自分を育てた女中と自分との共通点を見つけた時は心強かったのだろう。「見よ」と言いたくなるのも無理はない。暗いトーンの作品も好きだけど、こういう明るくて前向きな部分を覗かせる作品も好き。

両親を亡くし祖父母に育てられたみかげ。中学生の頃に祖父が亡くなり、大学生になって祖母も亡くなってしまう。祖母と二人で住んでいた家を引き払ってもっと小さくて安い部屋に引っ越そうと思うけど、なかなか行動を起こせないまま時間は過ぎていく。

ある日、祖母の行きつけの花屋でアルバイトをしていた青年がみかげのもとを訪ねる。青年の名は雄一。「うちにしばらくいればいい」という雄一の申し出で、みかげはしばらくの間雄一とその母えり子と三人で暮らすことになる。えり子はもとは男だったのだけど、雄一の母の死をきっかけに女になって女手一つで雄一を育ててきた。そんな彼女がみかげに言う。「人生は本当にいっぺん絶望しないと、そこで本当に捨てらんないのは自分のどこなのかをわかんないと、本当に楽しいことが何かわかんないうちに大っきくなっちゃうと思うの。あたしは、よかったわ」

のちに料理の先生のアシスタントになったみかげの料理に対する情熱を見ていると、確かにえり子さんの言うことは当たっていたなぁと感じる。自分にとってどうしても必要なものを失いそうな場面でも、彼女にとっての【本当に楽しいこと】が彼女を助けてくれたし…。

夜中に食べたカツ丼があんまりおいしくて思わず持ち帰りを頼んで雄一に届けに行ってしまうシーン。「カツ丼の出前に来たの」「わかる?一人で食べたらずるいくらい、おいしいカツ丼だったの」と言って、みかげはリュックの中からカツ丼のパックを取り出す。ここまで読んで「もう大丈夫だ」と安心した。すごくいいシーンだなぁと思う。私もカツ丼を食べたくなってしまった。

ノルウェイの森』に続いて,個人的に村上春樹2作品目を読みました。どうせ読むなら最初からと言われたし,デビュー作から…

1970年の夏の18日間を描いた話。オシャレな青春小説。うん,そうとしかコメントしづらいw

村上春樹の小説は「何も起こらない」作品であることは知っていましたが(純文学は総じてそうだが),中編だし盛り上がりも少ない。ただただオシャレにビールを飲む若者の話。というと身も蓋もないか。

『ノルウェイの森』でもあったけど,将来大人になった「僕」が過去を一人称で語る形式は結構なんだけど,結局「僕」が何者になったかは明かされていない。物書きっぽいのである意味では「僕」は村上春樹その人であり,自伝小説のようにも見える。これも作家のテクニックなんでしょうか。

テクニックと言えば,ありもしないデレク・ハートフィールドという架空の作家を熱心に取り上げているところがすごい。これで騙された人も多いみたいですね。あとがきでも真面目に触れているし。当時の新人作家としては驚異的なテクニックというか,腹の座った人だ。文壇をおもいっきりコケにしてるよね。

デレク・ハートフィールド - Wikipedia

1975年という発表当時に読んだらすごく斬新な小説だったと思うのだけれど,今となっては大作家の初々しいデビュー作という印象しか受けなかった…面白かったけど,その時代に読めなかったことがちょっと残念。

10月の読書会,課題図書は村上春樹『ノルウェイの森』。ついに私が村上春樹を読む日が来た…

私と村上春樹。単行本が刊行された1994年頃に読みましたよ,『ねじまき鳥クロニクル』。あまりの話の訳分からなさに途中でぶん投げましたよ。後から聞くと,最初の村上作品として『ねじまき鳥クロニクル』は敷居が高かったそうですが…

一度読んだから食わず嫌いではないですが,作中の人物の無駄にスタイリッシュな生活描写,難解なストーリー,信者とも言うべき熱狂的ファンの礼賛…それらが相まって,以来一度足りとも村上春樹は読んできません。もともと純文学があまり得意ではないこともあります。なので,私の村上春樹に対するイメージはこんな感じ:

  • やれやれ。
  • 僕はまずパスタを茹でようと思った。
  • 射精した。

しかし,読書会の課題図書となったこともあり(サイコロで決めた),主催者たる私が読まない訳にはいかない!ということで,実質初めての村上春樹『ノルウェイの森』,気合入れて読むよ!負けるな私!

あれ,普通に面白い…夢中になって上下巻一気に読んでしまいました…

ということで,村上春樹セカンドバージンの私が,同じように毛嫌いしてきた人のために『ノルウェイの森』の読み方なんてのをまとめてみたいと思います。ネタバレなしで。

相変わらずどちらが名字なのか分からない松尾スズキの「クワイエットルームにようこそ」を読みました.嘘.途中で放棄しました.

芥川賞受賞作ということで読んでみました.長嶋有「猛スピードで母は」.

猛スピードで母は (文春文庫)
長嶋 有
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一気に読めます.淡々と情景描写する文体.ただ私には読後に特に何も残りませんでした.

芥川賞受賞作って,こんなのが多いような…私と相性が悪いのかな,芥川賞.

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