原作とマンガの抜群の相性 - 川上弘美+谷口ジロー『センセイの鞄』

川上弘美『センセイの鞄』は,雑誌「太陽」(廃刊)で連載されていた頃に当時通っていたカフェで読んでいて,また私にとって著者初の作品だったこともあり,何かと思い入れがある作品です.

映画化もされたこの作品を,『孤独のグルメ』で知られる谷口ジロー氏が漫画化したらどうなる…という,なんとも実験的な魅力を感じるのが本書・漫画版『センセイの鞄』.

これが期待を裏切らず、なんとも原作通りの雰囲気!

ツキコさんとセンセイが静かに居酒屋のカウンターで飲むシーンは、『孤独のグルメ』などで見せた画者の腕が光ります.これは料理を美味しく見せるのは分かっていたことですが、やはり絵になるとすごい.

料理シーン以外にも、見所たくさん.エロネタで恐縮ですが、ツキコさんの裸姿がいかにも30代後半の女性らしく描かれており、妙にリアリティを感じてしまいました…映画版のキョンキョンは可愛かったけど、漫画の方がリアルを感じて面白い.

と思って読んでいたら2巻の巻末に川上弘美と谷口ジローの対談が.

川 ツキコさんの体,ゆるい裸だったのがよかったと思ったな.

谷 ちょっとボテっとしすぎちゃったかなと,もっとキレイに描けばよかったかなとは思った.

川 いや,あれがいいんですよ.キレイだとリアリティーが…

なんと原作者お墨付きの「普通の30代」という評価!

原作ファンはツキコさんの裸婦っぷりと対談だけでも買う価値あり!原作の静謐さが完璧に表現されています.こういう「ゆるやかに進む小説」あるいは「何も起こらない小説」と谷口ジロー氏の相性は良さそうです.