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書評:三浦しをん『きみはポラリス』

[tremens]書評:三浦しをん『きみはポラリス』

書いた人:tremens

三浦しをんの作品では非常に珍しい、「恋愛小説」である。「恋愛」をテーマに11編。とても色鮮やかで楽しめる短編集。

明るいコメディふうのもの、ミステリータッチのもの、文学のかほりがするものまでさまざまだ。書き分ける技術の高さにまた感動してしまう。恋愛小説にありがち(?)な切ない雰囲気を楽しむものではなく、しっかりとした“個”のこころの動きを描いている。

「きみはポラリス」というタイトル(短編集のタイトルであって、表題作はない)のとおり、北極星のようにはっきりと光る道しるべがこころのなかにひとつあったら、それは長い旅の心強いよすがになるだろう。
それは異性とは限らない。目の前に存在する他人とは限らない。気持ちの交流ができる相手とは限らない。ただ、その強い気持ちが「在る」のだということは、とても共感できる。

話が合って一緒にいて楽しい相手というなら、岡田にとっては寺島もそうだ。寺島だって、たぶん岡田のことをそう思っているだろう。それなのに、女とはセックスし、ずっと長い時間を過ごしてきた寺島とはセックスしないのは、変ではないかと感じた。セックスするか否かは、結局は性別で決まるのか。だとしたら、一緒にいて楽しいと思う気持ちや過ごした時間にはなんの意味があるのか。(p.290)

私ではない誰かと、あのひとと繋がりたい、そして、ひととひとの関わりを大事にしたい。
そういう気持ちから恋愛も友情も始まることが多いけれど、だったらそのふたつの違いはどこにあるのだろう?とずっとずっと考えている。どうやらこの短編集の冒頭と巻末を飾る岡田くんも考えているらしい。(この2編はある層には秀逸の作品!)
強い気持ちはイコール「思い込み」だから、いかに自分をひとつの方向に「思い込ませるか」も恋愛には必要なんだよね、と身も蓋もないことも考えるけれども。

このエントリーをはてなブックマークに追加 2010年07月15日 21:09 | URL | トラックバック (0) | 恋愛小説
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