書評:三浦しをん『三四郎はそれから門を出た』

@mixvoxです.最近twitterでもアクセス数でも共同執筆者の@tremensが人気で,若干嫉妬の炎を燃やしています.ぐぬぬ.反響があるのはいいことだ!

さて先日,@tremens先生(既に先生呼ばわり)と三浦しをんについてtwitterでお話しました.流行りの作家ですが読んだことないんですよね.オススメを訊いたところ,@tremensからは次のような回答が.

Twitter / tremens: @mixvox 手軽に文庫化されたものから。「風が強 ...

@mixvox 手軽に文庫化されたものから。「風が強く吹いている」で泣こう!んで、「私が語り始めた彼は」でへえ、と思って。BL風味なら「まほろ駅前多田便利軒」(いや、直木賞ww)と「月魚」。書評エッセイの「三四郎はそれから門を出た」もいいよ!・・・熱く語っちゃったわ。

なるほど.先生オススメの中で手っ取り早く手に入った書評エッセイ『三四郎はそれから門を出た』から読んでみました.

夏目漱石の名作3つをくっつけた適当すぎるタイトルですが,これは面白い!初めての三浦しをんですが,一気にファンになりました.

気になる作家の本で最初にエッセイを読むとは何事だと小説原理主義(?)の方には怒られるかもしれませんが,とにかく軽妙な文体にハマりました,この書評エッセイ.面白すぎる文章の一部を紹介.

彼は十五歳の健康な男子で,すぐに勃起してしまう(私は弟に,「十五歳の男の子って,ホントにこんなにいつも勃起しちゃうもんなの?」と思わず聞いてしまった.それに対する弟の返答は,冷ややかな無言であった.私はそれを肯定の意に取ることにした).
本屋において私が自分自身に課す重大な行動原則は,「エロ本はいついかなる時も堂々と買う」である.周囲の客の目,書店員の目に臆するな.棚の前でじっくりと吟味し,選んだ本を手に持ってゆっくりとレジまで歩き,バーンと表紙を見せて書店員に渡すべし!エロ本を買うのは決して恥ずべき行為ではない.己れの内なる欲望に気づき,現実では味わえない愉楽を知るための,非常に重要な第一歩なのだ.エロスと向き合うことはすなわち,想像力を作動させることだ…!
夢の話をしよう.私の夢は,男子校の図書館司書になることである.

「先生,面倒だから授業さぼってきちゃったよ.ここで本を読んでてていい?」

サッカー部主将の坂本君(かっこいい)がやってきた.彼は,友人の前ではバリバリのスポーツマンという態度を崩さないが,実は読書好き.そのことを知っているのは,図書館司書である私だけだ.

「しょうがないわね.好きなだけ読んでいきなさい」

昼の日が差しこむ図書館で,坂本君と私の秘密の時間が静かに過ぎていく….

はい,これだけで失笑・苦笑・爆笑を抑えきれなかった方には三浦しをんのエッセイおすすめ!このノリについてこれなかった人,たぶんこの先読まなくていいです.

私が読んで「誰かの文章に似ているなー」と既視感を抱いたのは永倉万治さん,そしてリリー・フランキー卿.抜群の観察力,下世話な想像力,ひとつネタを見つけたら微に入り細に入りネタにしまくる丁寧さ,リリー・フランキー卿にそっくりです.一方,永倉万治さんに匹敵する洒脱さ,数ページの短いエッセイでの納得感,軽い文体の裏にある膨大な知識や博学ぶりに驚かされます.著者は私と同い年(1976年生まれ)だけど,読書量が半端ではないです.

一応は書評エッセイという位置づけの本書ですが,割と本に関係ないフリーダムなエッセイ.とにかく面白い.久しぶりにすごいエッセイを読みました.著者はエッセイの豪放さに対し,小説はとても繊細と聞きます.全部読んでみたい!…ちなみに私が「その当時出ている著書をすべて読み集めた」作家は,リリー・フランキー卿,永倉万治さん,松久淳さんくらいです.20過ぎてからな.どうも,その仲間入りを果たしそう.

とりあえず,次は小説読む.