書評:アンドリュー・ゴードン「日本人が知らない松坂メジャー革命」

今年,個人的には十分活躍したと思われるレッドソックス・松坂大輔投手.そのメジャー1年目を,ハーバード大学教授である著者が書いた「アカデミックな視点とファンとしての視点を組み合わせた」本を読みました.

日本人が知らない松坂メジャー革命 (朝日新書 71)
アンドリュー・ゴードン
朝日新聞社 (2007/10/12)
売り上げランキング: 107425
bk1で「 日本人が知らない松坂メジャー革命」を探す

今年,松坂投手はレギュラーシーズンで15勝12敗,防御率4.40という成績でした.1年間ローテーションを守ったものの,この成績は日本のファンには物足りなく映ったのではないでしょうか.少なくともマスコミはそのように報道していました.これについて,6月末に日本のメディアの「松坂フィーバー」が沈静したことを地元ボストンがこのように報じていたとのことです.いや,怒り狂っていたというべきか.

「日本人はどうなっているんだ」
「初めてやって来る異国のリーグに適応するのがどのくらい大変なのか,やつらはわかっていないじゃないのか」
「松坂がどれだけすばらしい仕事をやっているかを,日本人はわからないのか.登板する全試合でノーヒットノーランをやれとでも言うのか」

当時の日本メディアでは考えられない温かい言葉ですね.実はこのボストンの姿勢にも裏があったりというのが本書の指摘すること.


さて,本書のいうところの松坂がもたらしたメジャー革命とは何なのか?という話.まずは収益について,レッドソックスの営業・マーケティング担当のサム・ケネディ副会長の言葉.

「(前略)バンク・オブ・アメリカやマスターカード,コカ・コーラと商売するときに,松坂と岡島が日本から来たという事実が重要ではない.ふたりがレッドソックスを助け,強力な,そして人気のあるチームに押し上げたということが大切なのだ」

レッドソックスが日本戦略を布いていた理由について.

それは強いチームを作り上げようとしう企図であると同時に,レッドソックスの歴史上の陰の部分,すなわち強い人種差別球団だった歴史を打ち消そうという現在進行中の作戦でもあったのである.

レッドソックスが黒人選手を入団させたのは1959年,メジャーの球団としては最後だったそうです.そして,日本野球について.

いちばん重要な変化は,アメリカ人の日本の野球に対する評価のレベルアップである.

アメリカで散々言われている先発投手の投球制限.日本のピッチャーの投げ込み,そして先発完投.これらの検証がアメリカの野球文化でも検討されているというのが本書の指摘です.


松坂投手本人や日本のプロ野球関係者に対するインタビューがなく,これらの意見に対する検証がなされていないのは残念ですが,興味深い意見ですね.また,地元ボストンでの松坂への期待と応援が確かなものであるのは嬉しいです.

松坂の本領発揮,そしてメジャー革命が確かなものになる2年目が楽しみですね.